大楠栄三=訳
ルリユール叢書
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神よ、どうしてあたしを高貴な生まれにしたの? どうして卑しい庶民として生んでくれなかったの? どうして頭から足まで下層民に、容姿も下層民に、振る舞いも下層民に、魂も下層民にしてくれなかったの?……
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『ドン・キホーテ』のパロディーたるスペイン自然主義文学にして、マリオ・バルガス゠リョサに「20世紀初頭の前衛小説に先んじた手法」と称された《非現実の夢》を用い、首都マドリードの都市空間の綾を読み解くベニート・ペレス゠ガルドスの都市小説の傑作長編。本邦初訳。
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大作家だったのか。そのとおり。セルバンテスと較べるのはやりすぎだし、彼にはそのつもりもなかった。だが十九世紀と二十世紀初頭、ペレス゠ガルドスほど創意と工夫をもって粘り強く文学に身を投じたスペイン作家はいない。
――マリオ・バルガス゠リョサ
スペインの現代小説は、ガルドスから始まったと考えている。
――カミロ・ホセ・セラ
フェデリコ・ガルシア゠ロルカと、マドリードの飲み屋で昼食を取っていたとき、われわれは互いがガルドスの熱烈な賛美者だと知った。
――ビセンテ・アレイクサンドレ
息子たちには自分の父親への反抗心が、父親を非難する傾向があるもの。だからこそ私は、ガルドスを二度と読もうとは思わない。
――ミゲル・デ・ウナムーノ
僕には、あのすばらしい作家、民衆の偉大な師であったドン・ベニート・ペレス゠ガルドスについて、あどけない思い出がある。幼少の頃、集会で彼がメモを取り出し読みあげるのを目にした。それはスペインでもっとも本物の、深みある声だった。
――フェデリコ・ガルシア゠ロルカ
■著者略歴
ベニート・ペレス゠ガルドス(Benito Pérez Galdós 1843–1920)
大西洋に浮かぶグラン・カナリア島に生まれ、英米の文化的影響のもと育つ。マドリードに上京して以来、生涯、自由主義の立場から多様な作品を執筆しつづける。ブニュエルによって映画化された『悲しみのトリスターナ』の原作者として知られるが、本国スペインでは「セルバンテスに次ぐ」と評され、ジャーナリズム活動のほか、小説20篇、歴史小説46篇、戯曲26篇という創作活動から、19世紀ヨーロッパの巨匠たちに比肩しうる作家である。
■訳者略歴
大楠栄三(おおぐす・えいぞう)
1965年、福岡県甘木市生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。現在、明治大学教授。専門は19世紀後半から20世紀初頭のスペイン小説・文化。訳書に、『ホセ・マルティ選集 第1巻――文学篇』(共訳、日本経済評論社)、ベニート・ペレス゠ガルドス『ドニャ・ペルフェクタ――完璧な婦人』、エミリア・パルド゠バサン『ウリョーアの館』(ともに現代企画室)、バリェ゠インクラン『独裁者ティラノ・バンデラス――灼熱の地の小説』(幻戯書房)、マリオ・バルガス゠リョサ『ペレス゠ガルドスの穏やかな眼差し』(近刊、水声社)がある。
■目次
第一部
第 一 章 別の小説の終わり
第 二 章 ヒル叔母さん
第 三 章 悪たれ(ペカード)
第 四 章 著名なミキス
第 五 章 一枚の名刺
第 六 章 男たち!
第 七 章 マドリードの獲得
第 八 章 ドン・ホセとその家族
第 九 章 ベートーヴェン
第 十 章 ベートーヴェンはつづく
第 十一 章 五十数回目の不眠
第 十二 章 ペス家の人びと(説教)
第 十三 章 気取り屋さん!
第 十四 章 クリスマス
第 十五 章 マリアーノの約束
第 十六 章 大団円
第 十七 章 平等――イシドラの自死
第 十八 章 あたしの叔父、聖堂参事会員からの最後の助言
第二部
第 一 章 日誌
第 二 章 清算
第 三 章 教会での幕間劇
第 四 章 AかBへ……前進……
第 五 章 カフェでの幕間劇
第 六 章 第二十五場
第 七 章 血色のいいキュテレイア
第 八 章 アバデス通りでの幕間劇
第 九 章 熊の愛情
第 十 章 ミキスの処方箋
第 十一 章 別の幕間劇
第 十二 章 いくつかの場
第 十三 章 モデル刑務所にて
第 十四 章 諸々の出来事について……
第 十五 章 そうなのか、そうじゃないのか?
第 十六 章 マリアーノの考え―集大成
第 十七 章 崩壊
第 十八 章 イシドラの死――ルフェーテ家の結末
第 十九 章 教訓
註
ベニート・ペレス゠ガルドス[1843–1920]年譜
訳者解題
■書誌情報
四六変形上製/632ページ
2025年8月
ISBN 978-4-86488-327-6